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こんにちは、土木公務員ブロガーのごろまるです。
みなさん11月10日は何の日かご存じですか?
11月10日は「無電柱化の日」です。

11月10日は「無電柱化の日」以外に「トイレの日」、「エレベーターの日」、「断酒宣言の日」など様々あるようです。
「無電柱化って何?」と思われる方も多いと思われます。
近年だと小池都知事の公約に「都道の電柱ゼロ化」があり、無電柱化について一時期話題になりました。
それでは「無電柱化とは何か?」について解説します。
無電柱化とは?
無電柱化とは、道路の地下空間を活用して、電力線や通信線などをまとめて収容する電線共同溝などの整備いよる電線類地中化や表通りから見えないように配線する裏配線などにより電柱をなくすことです。
無電柱化の現状
そもそも日本に電柱はどのくらいあるのでしょうか?
なんと、約3600万本もの電柱が立っています。
日本にある桜の木の本数と同じくらいになります。
では、なぜこんなにも日本に電柱が増えてしまったのでしょうか?
その歴史は第2次世界大戦後まで遡ります。
戦後のショックから速やかに復興するために「一時的なもの」として立てられ、高度経済成長期に電気の需要が高まり、次々に広がっていったのです。
そのため、「一時的なもの」であった電柱が今の日本の街並みでは普通なものとして浸透していきました。
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上の表からも分かるように、東京都でさえ無電柱化率は5%程度となっております。
ちなみに東京23区における無電柱化率は、8%程度です。
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また、外国主要都市と比較してみると、日本で一番無電柱化が進んでいる東京23区でさえ、かなり遅れをとっていることが分かります。
ロンドンの街並みは電柱がなくきれいですよね。

なぜロンドンなどの主要都市は無電柱化が進んでいるのでしょうか。
ロンドンでは19世紀に電気法により架空線を禁止にしました。電線などの架空線が禁止になることで電柱も立たなくなりました。
パリでは、自治体と配電事業者との契約により電線類の地中化を規定しました。
一方、日本では電線などの架空線禁止や電柱の禁止といった強力な法整備まではされていないのが現状です。

日本で電柱がないのは街の中心部や駅前ぐらいですもんね。
無電柱化のメリット・デメリット
無電柱化のメリットは次のようなものがあげられます。
- 良好な景観形成、観光振興
- 通行空間の安全性、快適性の確保
- 道路の防災機能の向上
無電柱化を行うことで、街の景観がよくなり、観光振興にもつながります。

上の写真は京都ですが、この伝統的な街並みに電柱や電線類があると美しい景観が台無しになってしまいます。
また、電柱や電線類がなくなると、道路の見通しが良くなり、信号機や道路標識が見やすくなるなど、交通の安全性が向上します。
歩道を広く使えるため、歩行者はもちろんベビーカーや車いすを利用する人にも安全で利用しやすい歩行空間が形成されます。

そして、何より重要なメリットとして、道路の防災機能の向上です。
近年だと令和元年に発生した台風15号の強風により千葉県南部で約2000本もの電柱が倒壊する災害がありました。
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上の写真のように道路に電柱が倒壊してしまうと、緊急車両等が通行できないため、更なる被災者が発生してしまう可能性があるのです。
そのため、防災上の観点から緊急輸送道路等の道路において、無電柱化の整備が進められております。
続いて、無電柱化のデメリットは次のようなものがあげられます。
- 建設コストが大きい
- メンテナンスがしにくい&復旧に時間を要する
- 地上機器の設置が必要
無電柱化にするためには、建設コストが大きいです。日本の埋設方法は、車両荷重も考慮した管路方式を採用することが多いためです。
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このように日本の埋設方法は、海外に比べメンテナンスを考慮しているため、コストが大きくなっているのです。
実際に、海外で採用してる「直接埋設方式」は安価ですが、埋設したケーブルが埋戻し材や車両等の城塞荷重によって損傷することや段差が生じると断線してしますリスクがあります。
ちなみに日本で採用されることが多い方式である管路方式は、1kmあたり約3億5000万円の費用がかかります。(国交省算出)電柱や電線で整備するおよそ10倍程度といわれております。
そのため、無電柱化が進んでいないのです。
また、電柱や電線のメンテナンスに比べて、無電柱化の場合は、ケーブルが地下に埋設されているため、メンテナンスがしづらく、断線等した場合復旧に時間を要します。
その他、無電柱化する場合は、「地上機器」を設置しなければならず、設置場所を歩道のスペースなどから生み出さなければなりません。
そのため、広い歩道がない道路において無電柱化することは難しいのが現状です。
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この箱が家の前に設置してほしくないため、地元住民から同意がもらえず事業が進まないこともあるみたいです。
無電柱化の方法
無電柱化の方法としては、「地中化による無電柱化」と「地中化以外による無電柱化」があります。
地中化による無電柱化
「地中化による無電柱化」は、「電線共同溝方式」、「直接埋設方式」、「小型活用ボックス方式」などがあります。
「電線共同溝方式」は、道路の下に電力線、通信線等をまとめて収容する方式です。沿道の各戸へは地下から電力線や通信線等を引き込む仕組みになっています。
この方式は、先ほども述べたとおり、コストが高い・狭い道路では使えないなどのデメリットもあります。

「直接埋設方式」は、道路敷地内へ直接、電力線や通信線等を埋設する方式です。圧倒的にコストが安く、工期も短いです。


それらの方式の中でも、道路管理者が設ける施設である「電線共同溝方式」が多く採用されております。
その他、電線類の地中化のためのコスト削減のため、様々な技術開発がされております
地中化以外による無電柱化
「地中化以外による無電柱化」は、「裏配線」、「軒下配線」などがあります。
「裏配線」は、メインストリートの裏通りや民地内等に電柱を配置し、メインストリートから電柱が見えないように整備する方式です。

「軒下配線」は、メインストリートの裏通り等に電柱を配置し、引き込む電線類を家屋の軒下や壁面等に配置する方式です。

裏配線や軒下配線は、観光地などで地上機の設置が難しい箇所などで整備されているイメージです。
事業主体は誰か
電線共同溝などの整備・管理者は、日本では道路管理者が管路・特殊部を整備・管理しております。
海外では、ほとんど管理・特殊部の整備・管理は電力・通信会社がしております。
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都道府県や市町村においては、国の補助を活用して整備を進めております。
自治体で「無電柱化推進計画」を策定している場合は、事業費を国が55%を補助してくれる制度もあります。
そのため、都道府県においては「無電柱化推進計画」を策定している自治体が多いですが、市町村で策定している自治体は少ないため、無電柱化の整備が進んでないのが現状です。
その他、電線管理者が自らの費用で管路整備をし無電柱化する「単独地中化方式」もありますが、電線管理者の費用負担が大きいため、浸透しておりません。

民間企業である電線管理者が大きなコストを支出するのは大変難しいものです。
最後に
- 無電柱化は景観・快適な通行空間の確保・防災性向上のために行っている
- 無電柱化には様々な手法がある
- 日本の無電柱化率は低い
- 日本では道路管理者が整備・管理する電線共同溝方式が主流
- 無電柱化の費用は大きい
- 11月10日は「無電柱化の日」
無電柱化は、あまり広く認識されていないものですが、防災面などにおいて重要な要素のひとつになっているのです。
これまで無電柱化について説明してきましたが、少しでも無電柱化の必要性や今の現状についてご理解いただければ幸いです。
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