近年、通学路を含めた生活道路における交通安全対策は大きな課題となっています。
交通事故死者数については、下降傾向にありますが、道路種別で見たときに「幹線道路」に比べ「生活道路」での事故件数の減少率は低いのが現状です。
ここで、「幹線道路」は車道幅員5.5m以上、「生活道路」は車道幅員5.5m未満をさします。

生活道路の死亡事故の特徴として、自宅から500m以内での事故が約半数を占めております。

生活道路の事故の原因が、自動車のスピードの出しすぎが大きいと言えます。
生活道路での事故を減らすために「ゾーン30プラス」といったエリアを設定して、生活道路対策を令和3年から行っております。最近では、テレビや新聞でも報道されております。
この記事では「ゾーン30プラス」について解説していきます。
ゾーン30プラスとは?
「ゾーン30プラス」とは、最高速度30km/hの区域規制と物理的デバイスとの適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域を設置したものです。
区域として設定するためには、道路管理者と警察が緊密に連携し、地域住民などの合意形成を図りながら整備していくことが重要になります。
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ゾーン30との違いは?
もともと交通管理者が30km/h規制のエリアを指定した「ゾーン30」と呼ばれるものはありましたが、速度を落とさないで走行する自動車が多く見受けられておりました。
そこで、規制だけではなく、物理的に速度を抑制するためのハンプやスムーズ横断歩道などの対策をプラスで行うことによって、生活道路での安全対策を強化する「ゾーン30プラス」の制度ができました。
規制のゾーン30+プラス(物理的デバイス)から「ゾーン30プラス」と呼ばれております。
また、これまで、交通管理者が指定する「ゾーン30」と道路管理者が指定する「生活道路対策エリア」があり、それぞれが生活道路の安全対策を行ってきましたが、「ゾーン30プラス」は交通管理者と道路管理者が一つの区域を密に連携して対策を行うものになります。
「ゾーン30」と「ゾーン30プラス」の看板と路面標示も異なっております。
下の1枚目が「ゾーン30」、2枚目が「ゾーン30プラス」の看板と路面標示になります。
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「ゾーン30プラス」の区域内を走行するときは物理的デバイスがあるのを意識して見てみると良いかもしれません。
物理的デバイスの種類
物理的デバイスには、スムーズ横断歩道、ハンプ、狭さく、ライジングボラードなどがあります。これらの対策内容について説明します。
スムーズ横断歩道
速度抑制効果の高いハンプと横断歩道を組み合わせた物理的デバイスでクルマの速度を30km/h以下に抑えるものです。横断歩道の高さを歩道の高さをフラットにして、車道に段差を付けたものです。
小学校前や通学路の横断歩道に設置する事例が多いです。

ハンプ
道路の路面に設けられた凸状の部分のことです。通過車両を一時的に押し上げ、事前にこれを見たドライバーが速度を落とすことをねらっています。
ハンプの設置により、自動車の走行スピードは落ちますが、ハンプの上を自動車が通ることによる騒音や振動が設置が進まない課題になっております。
最近では、30km/hの速度で走行した際にはあまり騒音や振動は起きない(ハンプなしの走行時と同程度)とされておりますが、30km/h以上での走行の場合は騒音が発生する場合もあるので、設置個所は慎重に吟味しなければいけません。
しかしながら、ハンプ設置の実証実験等では走行速度の低下が大いに期待される結果が出ており、速度抑制対策にはとても期待できます。

ハンプの構造は下図のようになります。

狭さく
車道に車線分離標などを立てて、道幅を一部狭くし、クルマが速度を出せないようにします。

ライジングボラード
自動車の進入を抑止する構造ですが、許可車両が進入する場合、ポールを下降させることにより通行が可能となる物理デバイスです。(ポールが上がる時間帯が設定されていることが多い)
この対策はポールの内側に住んでいる住民の協力が必要不可欠です。関係住民にポール昇降用のリモコンを配布するなどで協力を得ている地区もあります。
通学時間帯に地域の方々によるバリケードが設置され自動車の進入ができない時間帯があると思いますが、そのバリゲートの無人バージョンのようなものです。

まとめ
- 「ゾーン30プラス」=速度規制(30km/hのゾーン規制)+物理的デバイス(ハンプ等)
- 交通管理者と道路管理者が地域住民と合意形成を図り計画を策定し整備を実施
- 抜け道になっている生活道路の進入抑制、速度抑制
- 「ゾーン30プラス」の路面標示と看板はゾーン30と異なる
「ゾーン30プラス」は新たな生活道路対策となっており、今後全国で広がっていくことと思います。
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